2015年 6月 28日(日)午後 9時 57分
今日はオペラを観る日。関西二期会の公演「アンドレア・シェニエ」を、吹田の「メイシアター」に観に行ってまいりました。「アンドレア・シェニエ」は、ヴェリスモ・オペラの代表作。主役3人、なかでもジェラードが、半端じゃない難役と思っているものですから、観に行って、逆にフラストレーションを起こすのではないかと思い、当初は、行くつもりをしていなかったのですが、チケットが比較的安く買えるということで、あっさりと考え方を撤回。「アンドレア・シェニエ」は、舞台がフランス革命が、正に勃発しようかというところから始まり、ロベスピエールの時代に、アンドレア・シェニエの処刑で終わります。その時期の、アンドレア・シェニエとマッダレーナとの愛、ジェラードのマッダレーナに対する果たされない愛、苦悩、そして昇華が、物語の主要要素です。演出は、マケドニアのデジャン・プロシェフ。とてもオーソドックスのもので、装置、衣裳いずれも、あの時代のものを再現しようとしていたように思います。1幕は、マッダレーナのお屋敷内部、正面に、外から入れる扉があり、民衆が、ジェラードに伴われて入ってくるのは、ここから。2幕は、街角のカフェという定番の装置ではなく、高台の公園というのがおもしろい。公園から見下ろすかのように、革命派が通るという仕掛け。アンドレア・シェニエが構えているのは、公園のオープンカフェのテーブルか。ベルッシなんて密偵は、木立に隠れて、アンドレア・シェニエの様子を伺うというのは、やられてみると、至極、納得ができました。3幕は、導線が縦に切られるという洒落たもの。従って、民衆席は両脇に。右サイド側に、長机が、これも縦に。ここが、ジェラードの執務位置、及び、革命裁判所の裁判官が座る位置に。対面するような形で、被告席があるという具合。正面が出入口になっており、出入口の両脇と正面に三色旗と、この幕のお約束のものが、このプロダクションにも用意されました。4幕は、基本的に同じ構造。不要な三色旗、階段席が撤去され、替わりに、正面の出入口に鉄格子が配置されると、アンドレア・シェニエの収監場所となりました。このオペラ、1幕で貴族の贅沢な生活を描き、アンシャン・レジームの残り香を見せ、2幕以後の恐怖政治の時代と好対象を見せ、アンドレア・シェニエとマッダレーナの再会で、物語が動き出します。ですから、ここまでが仕込みと言えばいいでしょうか。この仕込みが頼りなかった。原因は、群集を動かせてないこと。舞踏会で、貴族らが動いてないと、楽しんでいるとか、民衆が騒いでいても無視している雰囲気なんて出ません。また、革命の時代になっても、革命軍を出さないで、それを見送る市民だけでは、革命の枠設定ができたとは言えません。一方、バラシに入っていく3幕以後は緊張感が急上昇。ま、特に3幕は、主役3人が、それぞれの内面を吐露する素晴らしい歌唱が用意されていますから、ヘタを打たなければ大丈夫。中でも、アンドレア・シェニエを歌った藤田卓也が群を抜いた歌唱。ジェラードの油井宏隆も、最初は期待を持ったのですが、この肝心の3幕で息切れ状態。声を出すのに頑張っているという印象。マッダレーナの尾崎比佐子はと言えば、声質が、黄紺的には気に入らないけど、緊迫感だけは、いやに高まりました。この緊張の持続に貢献したのが、指揮のダニエール・アジマン。随分とテンポを揺らします。歌手をのせるのが、とっても上手そう。本日のオケ、大阪交響楽団は、よくついていきました。おかげで、前半の失地回復。このくらいのグレードを保ってもらえるなら、毎回観てみたいなの印象でした。 |