2019年 4月 27日(土)午後 8時 43分
今日は、びわ湖ホールであった「びわ湖クラシック音楽祭」に行く日。1時間未満のコンサートが幾つも用意されているのですが、黄紺は、1日2つと決め、時間的に離れているときなどは、さっさと諦めることにしています。有名どころが数多く出演されていますから、目移りして仕方がないのですが、節操というものもあるだろうと考え、そういった方針を採っています。従って、明日もあるのですが、思い通りのピックアップは無理と判断し、あっさりと行かないという選択をしました。で、今日は、次の2つのコンサートをピックアップしました。①葵トリオ〈小川響子(ヴァイオリン),伊東 裕(チェロ),秋元孝介(ピアノ)〉②沼尻竜典オペラセレクション プーランク作曲 歌劇『声』 (全1幕/演奏会形式)。まず、①ですが、「第67回ミュンヘン国際音楽コンクール1位」という堂々たる肩書きを付けての登場です。プログラムは次の2曲。「ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲第5番”幽霊“ ニ長調 op.70-1」「マルティヌー:ピアノ三重奏曲第3番ハ長調 H.332」。このトリオ、ミュンヘンの覇者の看板は偽りではありませんでした。「何という才能」、これは、先週、同じミュンヘンの覇者河村尚子の演奏を聴いたときに、自然と口をついて出てきた言葉でしたが、僅か1週間で、再び、この言葉を口にするとは、ホント、ミュンヘンの覇者は本物です。3人が3人、個性が爆発、変幻自在、音楽に合わせて、自らの音を紡ぎます。ピアノの秋元さんは3回目ですから、もう実力は判っていたのですが、この人の多彩な音、なかでも高音が素晴らしい。これは、初めて聴いたカフェモンタージュで驚かされたこと。あとの2人は初遭遇。始まった途端、伊藤さんの音は歌ってました。チェロは、本当に多才な奏者を、次から次へと輩出します。そして、小川さんのヴァイオリンは、マルテイマヌーで大爆発でした。この人の力強い音色は魅力的でした。三者三様、素晴らしい才能の持ち主の上に、このトリオのいいのは、他の奏者の音を、とってもよく聴いているところ。こんなに聴いているアンサンブルってなかったと思えるほど、精緻のアンサンブルに超脱帽でした。①が終わると、黄紺は、暫し休憩。外が寒すぎるため、ロビーで待機。次の②はオペラ。「沼尻竜典オペラセレクション」と副題が付いているのですが、これは、今年度中に、びわ湖ホールがリニューアル工事に入るために、夏や秋に、この名の公演が行えないということで、今回の音楽祭に組み込まれたもの。キャストなどは、次のようなものでした。(ソプラノ)石橋栄美、(舞台構成)中村敬一、沼尻竜典指揮京都市交響楽団。当初は、砂川涼子の出演でしたが、キャンセルということで、急遽、石橋さんの出演となったようです。黄紺には、このキャンセルが、日本まで付きまとうようですが、びわ湖ホールからチケットを買ったということで、同ホールから、事前にメールで連絡がありました。この辺は、いかにも日本らしいですね。肝心のプーランクのオペラは、今回の公演があるまで、存在すら知らなかった作品。1幕もので、登場人物1人、上演時間は1時間に満たないということで、この音楽祭の尺に合うということで選ばれたのでしょうが、実際聴いてみると、「カルメル会」で惚れ込んだ見事なプーランク・サウンド。「カルメル会」に似た和みのメロディも、度々流れますが、こちらも、ストーリーは重い。自分から去って行った男との最後の電話、今と違い、回線状況によっては切れてしまうということが起こったり、交換手が繋ぐ時代が舞台になっているため、繋ぎミスがあったりと、主人公の女にはイラつくことばかり。ただ、話は、それだけでも重いのですが、ラストが近づく、言い換えると、男との永遠の別れが迫ってくるという要素だけではなく、女は自死のために服毒してから、この電話をしているのだという、絶望的な空気が出てきて結末を迎えるというもの。プーランクの例の美しいメロディに乗せて、この重い物語が紡がれます。沼尻&京響の奏でる音楽に乗り、カヴァーだった石橋さんの歌唱がお見事。この人、既に知られた歌手ではあったと思いますが、この好演で名を上げるんじゃないかな。一人芝居のカヴァー、並大抵の人ができることではないはず。大拍手です。一応、演奏会形式の上演となってはいましたが、指揮台の傍らに、卓台とソファーを置き、その周囲のスペースを使い演技をしながらの上演となりました。背後の壁板の操作が入っていたのに、途中で気づき、その意味なるものを考察する機会を逸したのは、不徳の致すところでした。また、顔馴染みのない演目だったからでしょうね、せっかくの上演にも拘わらず、入りが良くなかったですね。周りには、人が溢れてたというのにと思うと、何とも言えないな、ホント。 |